眠れる森のビヨを見てきました



BEYOOOOONDSが主演の舞台、演劇女子部「眠れる森のビヨ」がこくみん共済 coop ホールにて4/16からその幕を上げました。観に行ってきたので感想を書きます。ネタバレばかりなのでダメな方がいたら見ないようにお願いします。配信のチケットはこちらから↓



ファン以外にはあまり知られていないかもしれませんがハロプロは昔から「演劇」に取り組んでおり、演劇女子部では毎年メンバーが舞台やミュージカルに挑戦しています。なかでもBEYOOOOONDSはデビュー曲「眼鏡の男の子」でも寸劇に挑戦したり、普段の曲でも台詞が入っていたり茶番があったり掛け合いがあったりと、他のハロプログループの中でもとくに演技にちからが入っており、2019年に「不思議の国のアリスたち」、2020年に「アラビヨーンズナイト」の公演を行なっていて今年で4度めの舞台への挑戦となります。

私個人の話をすると、ハロプロに関してはまったくの在宅なのですが先日友達とカラオケボックスで見たアラビヨーンズナイトのDVDがほんとうにほんとうに素晴らしくてめちゃめちゃ質の高い作品に頭を殴られ、絶対にこの子たちの舞台を生で観たい!この子たちの声をその場で聞きたい!といてもたってもいられなくなり新宿駅に降り立ちました。





今までのBEYOOOOONDSの舞台は、きらびやかな衣装を着たお姫様や魔法使いが出てきたりとジャンル分けするとしたら完全に「ファンタジー」でしたが、今回は今までの物語とはまったく違いました。わたしの中で舞台やミュージカルというものは出来ることなら何度か足を運びたい、千秋楽に向かってどんどん良くなっていくそういう過程を見たい。でも今回はつまらなかったとかそういうことではまったくなく、表現に魂を奪われてしまって、自分の琴線に触れるようなとてもヒリヒリとしたシーンがありとてもじゃないけれど1日に何度も見たりとかそういうことは私は出来ないと感じました。観劇したあとも、誰かと語り合いたいというよりはひとりでじっくり向き合いたいようなそんな内容のもの。



◎ストーリーの要約


高校演劇部に所属する男の子「ヒカル」とその部員たち、そして幼なじみの女の子「ヒマリ」との日常。演劇部はなかなか一致団結出来ず揉めながらも、ヒカルが台本を書いた「眠れる森の美女」をアレンジした物語を演じることに決まり、全国大会を目指し日々奮闘する物語。

ここまではわりと、高校演劇を扱ったものではありがちな流れだったのですが、この作品のビジュアルを見るに「眠れる森の美女」に出てくるオーロラ姫はヒマリ役の島倉りかちゃんだと、私はそう思い込んでいました。でもヒマリは演劇部には所属していないので不思議に思っていたところ、展開が進むにつれヒマリの姿はヒカル以外の人間には見えていないことがわかる。ヒカルが時々見る悪夢には、呼びかけても呼びかけても目を覚さないヒマリの姿と、ゴーンゴーンと脳内に響くひどく大きな音。そして車のブレーキ音が繰り返される。


少しずつ、日常がゆがみはじめ、歯車が狂っていく。



実は、

全国大会に向かう道中に部員を乗せたバスが事故に合いヒカル以外は全員、死んでいた。

ヒカルが過ごしていた仲間との楽しく幸せな日々は本当はすべて夢の中の世界であり、実際のヒカルは病院のベッドの上で5年間も眠り続けたまま。ヒマリはヒカルを現実の世界に連れ戻すために夢にあらわれていた。眠れる森の美女は、ヒマリではなくヒカルだった。




◎平井美葉ちゃんのこと


BEYOOOOONDSの舞台ではいつも誰かひとり、スポットライトが当てられますが今回はそれが平井美葉ちゃん演じる男子高校生「ヒカル」でした。美葉ちゃんはハロプロの先輩がたにもたいへん気に入られており、ハスキーな声やキレキレのダンスに反した赤ちゃんみたいにふやふやした雰囲気にギャップがあるとても魅力的な女の子です。


参照動画↓


今回の舞台を見てオタクの余計なお節介とわかっていながらも思ってしまったのは、わたしたちは平井美葉というこんなに素晴らしい才能を持った人間をハロープロジェクトに縛り付けてしまっているのではないか?ということ。美葉ちゃんは研修生上がりではなく一般のオーディションで合格したこともあってかハロープロジェクトに新しい風を吹かせてくれている気がするのですが、それは美葉ちゃん自身から溢れるジャニーズのような王子様オーラや特徴のある声だけでなく、観客側に訴えかけるあの表現力だとわたしは感じました。

ずっと、そこに平井美葉ちゃんはいなかった。平井美葉ちゃんによく似たヒカルがいただけ。

今ものすごく平井美葉ちゃんに会いたいです。"平井美葉ちゃん"に会いたい。そう思ってしまうくらい、美葉ちゃんは「ヒカル」になっていました。

わたしが、というか観劇した人たち全員が多分一番しんどかったのは、もう死んでしまった演劇部員のみんなとヒマリとの間にはさまれたヒカルの姿でした。自分が今いるこの世界は夢の中の世界だと理解したけれど、夢から覚めること=死んでしまった仲間たちを置いていくことはほんとうに幸せなのか?逆に見たいものだけ見て、聞きたいことだけ聞いて、そんな夢の中で現実から目を背けることは幸せなのか?死んでしまったみんなと5年間もヒカルが目覚めるのを待ち続けたヒマリ、双方からの「行かないで」「忘れちゃうの?」「それで幸せなの?」「どっちが幸せなの?」「それでいいの?」。ヒカルはどちらの道がほんとうの幸せなのか、正しいことなのかがわからなくなり泣き叫びます。

その時の、美葉ちゃんといったら………………(頭を抱えるようす)



美葉ちゃんのブログより引用↓

いろいろなんか…言葉にできない。
なぜならこの3日間でゲネプロも入れて怒涛の7公演だったので。
もうね、感情が迷子よ!
切り替えもそんな簡単にできないしさ。
終演後、会場出たらまだ明るくてびっくりしました笑
はぁ〜生きてるわぁ〜
お母さんのご飯おいしかった😋

そうだよなあ、そうだよなあと思います。普段俳優さん女優さんを見ていても思うことだけれど、演じるということはその人の人生を生きるということで。でも一回の公演であれだけの感情を毎回出し切らねばならない美葉ちゃんを想像するともう、それだけで苦しくなります。お母さんのごはんをいっぱい食べて、どうにか平井美葉でいられる合間の時間をゆっくり過ごしてほしいです。






◎この重たさはなにか


ヒカルは仲間たちに台本を書くことを任命され「眠れる森の美女」をアレンジしたものを書き上げるのですが、そのお話のラストは"お姫様は王子様のキスで眠りから覚めて幸せに暮らす"というラストに疑問を抱いたヒカルが大きく書き換えたものでした。

お姫様は王子様のキスで目を覚ますけれど、100年も眠っていたのだから浦島太郎状態。自分を知っている人は誰もいない。夢の中の方が幸せだった、起こしてほしくなかったと、そう言ってふたたび、自ら眠りに落ちてしまいます。ここがなんとなく、アイドルオタクとしてずっと夢の中にいたいと思ってしまっている自分に重なった。


そういうわたしのような人種に向かって、夢からさめなくてていいのか?逆に夢からさめることは本当に良いことなのか?この選択で苦悩する姿を見せるのは、まさにこちら側自身の内面で日々起こっているせめぎあいを見るようでもありました。

わたしにとって一番残酷で重たい瞬間、それは「夢からさめる」ということ。そこに主題をおいているのだとしたら、これはものすごい問いかけじゃないかな?オタクがそういう気持ちになるのはきっと、好きなアイドルの脱退や解散で大好きだった人が手が届かない場所に行ってしまうこと。

ヒカルは最後、自らの意思で夢から覚めることを選びます。もしわたしがヒカルだったらヒマリではなく演劇部を選んだかもしれません。みんなを乗せたバスが事故にあってしまったのはそもそもヒカルが遅刻をしたせいでもあり、遅刻の原因になったのはヒマリのせいでもあった(もちろん一番悪いのはトラックですが)。


目を覚まし、罪悪感の中で苦しんで
生きることは幸せなのかな?

何が幸せなんだろう?

何をもって人は幸せと言えるんだろう?

生きること=幸せではない。


 



◎ドルオタとしての感想

今回、BEYOOOOONDSのメンバーみんなの演技力や表現力に改めて驚かされました。 どうしても好きなアイドルや俳優さんきっかけで舞台を観に行くと、本番中でも役じゃなく本人のことを見てしまうことがほとんどだったんですが(例えばお姫様の衣装を着てる◯◯ちゃんかわいいな…とか)、この子たちの作るステージというのはもうその役にしか見えなくて、そこにBEYOOOOONDSのメンバーはいなかったように感じます。外見こそメンバーであれ、魂は完全に別人というか。


演劇部員のひとり、ショーコ役を演じた清野桃々姫ちゃんもブログでこう話していました。

今回、何も見え方とか意識してなくて、(いいの〜〜?)いや、してるんだけど、

全くみなさんを感じず、ただただショーコを生きています。他の子もそうだと思うな〜、。

前回の舞台アラビヨーンズナイトではお客さんありきの演出があったし、そこで生まれるエンターテイメント性みたいなものもあったけど今回は全くそういうのがなくて、桃々姫が書いてるように"ただそれぞれを生きてる"という感じがしました。ほんとうに現実に存在していそうな高校生。個人的にそれは、お姫様や魔法使いといった架空の人物を演じるよりはるかに難しいことと感じます。

今回の舞台は普段の本人の性格とはかけ離れた役をもらっている子も多く、ひとりひとりがすごく役柄を作り込んで出来上がっていることがわかりました。他のフェスの準備をしつつのこの出来なので本当に尊敬します。いつだってわたしがアイドルにやられてしまうのはそういった、表に出ない努力を感じる時でした。

BEYOOOOONDSはかっこいい。当たり前のように全員歌が上手い。12人で走り切ることの喜びを一度味わった子たちだから、もっともっと高みを目指そうと思えるのだと思います。そういう感覚ってなんだか運動部の部活みたいで憧れるなあ。





◎アイドル演劇


アイドル(というか好きな人たち)の舞台を何度か目にし、トラウマになったことがひとつありました。

それは、舞台上で誰かが死ぬこと。


数年前に観に行ったももいろクローバーZのミュージカル、ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?の中でも序盤から彼女たちは交通事故にあいその人生に幕を閉じました。あれは本人たちでなく役だということをわかっていても心臓を掴まれたような気持ちになったことを覚えています。今回はもっとひどかった。照明がチカチカとひかり、けたたましいブレーキ音が鳴り響き、次にうつったステージ上に目をやると全員地面に横たわっている。あの光景を見たヒカルは、美葉ちゃんはどんな気持ちだっただろうか?



わたしはアイドル演劇を求めているわけでも、プロの演劇を求めてるわけでもなく演劇についてまったく詳しくないので何も言えません。

ただわたしはBEYOOOOONDSの演劇が好きで観たいだけ。BEYOOOOONDSが何を目指してて何をどう表現するのかをこれからも観続けたい、ほんとうにただそれだけです。




眠れる森のビヨは2021年4月16日から4月25日までこくみん共済coopホールにて上演されています。たくさんの人に見てほしいというオタクの声を組んでか、本公演の配信も決定しました。チケットの販売期間は4/19(月)17時から4/30(金)24時で、視聴期間は4/29(木祝)14時~5/1(土)14時となっています。


どうかBEYOOOOONDSの舞台が内輪で終わることなく、たくさんの人のもとに届きますように。そして評判が広まって、演出家がこぞってBEYOOOOONDSに演出したいと思わせるような、オタクがチケット取れない!!みたいなムーブメントになってほしいな、なんて、そう思います。




おわり